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知の筋力強化ー1 フィールドワーク
 「知の技法(東京大学教養学部「基礎演習」テキスト)」(東京大学出版会)第Ⅱ部「認識の技術」の最初の項目でこのフィールドワークが紹介されています(執筆担当:中村雄祐)。

 冒頭で,フィールドワークの魅力について,以下のように語られています。 

 

 何気ないささやかな差異の認識から出発して,それが,最終的には,世界史的な文脈を問うことにつながり,さらには,研究主体の文化的立場そのものすら揺らいでくるほどの衝撃になる。フィールドワークは,その意味で危険な,驚くべき出会いの場なのです。



 フィールドワークを特に重要な研究手法としている学問には,たとえば文化人類学があります。

 文化人類学という学問の世界では,たとえば研究対象としている地域に比較的長期間滞在し,衣食住をはじめとした様々な生活の様子,地域の文化などを調査することになります。
 そういう意味では,マラソンのように,「知の筋力」だけではなく,「知の持久力」も求められるのがフィールドワークです。

 フィールドワークは,図書館などでの調査と異なって,たとえば自然条件や政治状況の変化などによって,ときとして思い通りに調査を進められない事態に陥ることが予想されます。
 そのような場合に臨機応変に対応できる力も求められるのがフィールドワークという手法の特質です。 

 フィールドワークによって意義のある研究成果を生み出すために,以下のような専門の研究者の言葉も胸にとどめておく必要があるでしょう。

 

実際に,(フィールドワークで)驚くためにはある程度の知識,経験も必要です。最初のうちは「なんか妙だな?」とちょっと引っかかる程度のことだったのが,いつのまにか恐ろしく手強い問題に化けていたり,ということもあります。そうなると,問題自体,もはやフィールドワークの枠内で論じ切れるものでもなくなり,フィールドワークが終わった後も研究者にずっとついてまわることになるのです。



 全くの無の状態からフィールドワークを始めることはまずありません。

 学校での「座学」の意義がよくわかる話でもあります。

 そして,「基礎」と「基本」の違いを説明できるエピソードにもなります。

 フィールドワークという研究方法は,学問(学者)の世界だけではなく,小学生や中学生にとっての「知の筋力強化」にも,非常に高い学習効果が期待できるものです。
 
 地図をもって知らないまちを歩く

 その準備として,まちの情報をのせた資料や,そのまちの地図から読み取ることができる情報をあらかじめインプットし,フィールドワークを実施する目的・問題意識をしっかりもつ。

 このときに,そのまちの特殊性や課題を資料や地図から読み取れる技能がなければ,そもそもフィールドワークが「行き当たりばったり」のものになり,可能性としてはかなり低い「現場で課題に気付く」ことにかけるしかなくなってしまいます。

 ただ地図をもって歩くことが「フィールドワーク」ではありません。

 「基礎学力」には,地図から情報を読み取ること,地図を使って目的地にたどりつけることなどの学習技能が含まれます。

 基礎がなければフィールドワークの「基本」的な学習が成立しません。

 学問一般にもあてはまる問題構成の主要な要素としては,

1 「問い」があること。

2 研究対象がはっきりしていること。
   ここでは,地域的特色,別の言葉で言えば特異な固有性をもつ対象と,「問い」の一般性がどう結び付けられるかどうかが研究の成否をかぎを握っています。

3 関連対象を選択すること。
   どのような文脈の中で,研究対象を扱うか,特異な固有性を際立たせるために,あるいは,一般性も発見していくために,対象をさまざまなものと関連させていくことが求められます。

4 問題意識を反映した方法論をもつこと。
   研究成果を形にするときに,ただの主観的な記述ではなく,一般化が可能な方向に開いていく方法が,「知の行為」の基本となります。そのためにも,「自らを知る」ことも大切な作業です。

5 双方向的な「出会い」を意識する「主体」を確立すること。

 フィールドワークによる筋力強化を図っていく上で,このような様々なメニューを想定していくことで,「フィールドワークのためのフィールドワーク」「研究のための研究」「勉強のための勉強」に陥らずにすみます。

 目的意識をはっきりともった学習ほど,その効果が高いものはありません。

 そして調査の対象は特殊なものであったとしても,その目的意識に一般性があり,表現のうえでも「地図で表す」など,他の人が見てもわかりやすい=一般性が高い方法をとることで,「知の力」を実感することができるようになるのです。

 といって一般的なことを聞くより,実際のエピソードを聞く方が,まだフィールドワークに親しんだ経験がない人には分かりやすいかもしれません。

 次回はそんな話題をご紹介します。
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テーマ:学習
ジャンル:学校・教育
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